【日本向け】SDSと安衛法|表示・通知対象物質の含有量「幅表示」はどこまで許される?
2025.12.09
【日本向け】SDSと安衛法|表示・通知対象物質の含有量「幅表示」はどこまで許される?
SDSの幅表示はどこまでOK?裾切値をまたぐケースがNGになる理由や、安衛法で求められる含有量記載の基本、CBIとの関係をやさしく整理した解説記事です。
SDSと安衛法
混合物の安全データシート(SDS)を作成していると、こんな疑問がよく出てきます。
- 「SDS 安衛法の観点から、幅表示をどこまで使ってよいのか?」
- 「表示・通知対象物質に該当したとき、含有量をぼかしてもいいのか?」
- 「営業秘密(CBI)を守りつつ、法令も守る方法はないのか?」
この記事では、
- 幅表示が認められるケース
- 逆にNGになりやすい幅表示
- 実務でのチェックポイント
を、整理して解説します。
1. SDSと安衛法の基礎整理
SDS(Safety Data Sheet)は、化学物質・混合物の
- 危険有害性
- 取り扱い上の注意
- 応急措置・保管方法
- 規制情報
などをまとめた文書です。事業者間の取引で、一定の条件を満たす場合に交付義務が発生します。
1-2. 安衛法とSDS
労働安全衛生法(安衛法)では、特定の危険有害性を持つ物質について
- ラベル表示義務:表示対象物質
- SDS交付義務:通知対象物質
が定められています。
つまり、安衛法に基づき、どの物質について、どのような条件でSDSを交付し、どのように記載すべきかという観点が重要になります。
1-3. 表示・通知対象物質と裾切値(カットオフ値)
混合物中に含まれる表示・通知対象物質は、
- 物質ごとに定められた 裾切値(カットオフ値) 以上含まれるとき
- かつ、該当する危険有害性があるとき
に、ラベルやSDSへの記載義務が生じます。
この「裾切値」をまたぐような幅表示は、法令適用をぼかしてしまうため、要注意ポイントになります。
2. なぜ「幅表示」が問題になるのか?
2-1. 幅表示とは?
幅表示(レンジ表示)とは、SDSの成分含有量を
- 10〜20%
- 5〜8%
など、単一の数値ではなく範囲で示す方法です。
>前提:10%幅表記の定義
安衛法規則および厚労省からの通達(基発0424第2号)にて、以下のように記載されています。
- 十パーセント未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもって行うこと。
- この規定は法令上の最低基準であるため、10パーセント刻みより狭い幅の濃度範囲を通知することは当然に可能であること。
メリット
- 正確な配合比を隠せる(営業上の秘密を保護しやすい)
- 濃度変動がある製品でも記載しやすい
2-2. 幅表示が問題になる場面
問題になるのは、次のようなケースです。
- 表示・通知対象物質の裾切値の近くで幅表示する場合
- 幅の下限が裾切値未満、上限が裾切値以上になっている場合(例:裾切値 1% の物質に対して「0.5〜2%」と書く)
このような「裾切値をまたぐ幅表示」は、
- 読み手が「義務があるのか/ないのか」判断できない
- 実際は義務があるのに、ないように見せてしまうおそれ
があります。
3. 安衛法におけるSDSの含有量記載ルール
3-1. 原則はwt%で正確に
SDSの成分含有量は原則として wt%(重量%)で記載します。
社内の配合データや分析値をもとに、実濃度を把握し、その値を基に
- GHS分類
- 表示・通知対象物質に該当するか
- 他法規(化管法、毒劇法など)との整合
を判断します。
ポイント
「含有量の記載」は、義務の有無(裾切値の判定)の土台になる情報なので、裾切値付近では特に、あいまいにしないのが基本です。
3-2. 幅表示が認められる条件
営業秘密保護などの理由から、幅表示を使うこと自体は認められています。
- 例:10〜20%、1〜5% など
- 一般に 10%刻みがベース
- 技術的理由があれば、5〜8%のような狭い範囲も可
ただし、重要なのはその幅値全体が、裾切値の「上側」か「下側」のどちらかにはっきり属しているかどうかという点です。
⭐こちらもご参照ください。
R6年4月1日以降の安衛法改正により、含有量の幅記載はどのように変わるのですか?
4. 幅表示のOKラインとNGライン
4-1. OKになりやすい幅表示の例
例:ある物質Aの裾切値が 1% の場合
- 実濃度:2.3%
- 表記例:2〜3%、2〜5%
👉 幅の下限が裾切値(1%)より上なので、読者は「確実に裾切値以上」と判断できます。
4-2. NGになりやすい幅表示の例(裾切値をまたぐ)
- 実濃度:1.2%
- 表記例:0.5〜2%、0.1〜3%
👉 幅の下限が裾切値未満のため、
- 「1%未満かもしれない」と受け取られる
- 表示・通知義務がないように見える
という誤解を生むおそれがあります。
このような場合は、
- 1.2% と正確値で記載する
- または 1〜2% のように、幅全体を裾切値以上に設定する
など、「義務があることが明確に伝わる表記」にすることが重要です。
4-3. NGになりやすい幅表示の例(10%の幅値をまたぐ)
- 実濃度:2%
- 表記例:15~25%
👉この幅表示は 10%刻みの境界(20%)をまたいでいるため NG です。
このような場合は、
- 20~30%と10%の幅値で記載する
- または 20〜25% のように、幅全体の範囲を狭く記載する
などの対応が必要です。
5. CBI(営業秘密)とSDS 安衛法 幅表示の関係
5-1. CBIでも「危険有害性」は隠せない
営業上の秘密(CBI)として、
- 成分名を一般名にする
- 含有量の具体的数値を伏せる
ことは、一定条件のもと認められています。
しかし、SDS 安衛法の観点では、
- 表示・通知対象物質に該当するかどうか
- 労働者の安全確保に必要な危険有害性
は、営業上の秘密であっても隠してよい情報ではありません。
5-2. 一切隠せない物質もある
営業上の秘密であっても、成分名・含有量を省略できない物質もあります。
(例:製造許可物質、有機則・特化則・鉛則等の対象物質など)。
こうした物質は、
- 「営業秘密なので記載しない」
- 「幅表示でぼかして、対象物質かどうかわからないようにする」
といった対応は基本的に許されません。
まとめ:SDS 安衛法 幅表示のポイント
- SDS 安衛法では、表示・通知対象物質の有無を判断するため、含有量記載は裾切値との関係が非常に重要。
- 幅表示は、10%刻みまたはそれより狭い幅は認められるが、裾切値をまたぐ場合は法規該否が不明瞭になる可能性がある。
- 営業上の秘密であっても、危険有害性や義務の有無がわからなくなるような書き方は不可。
実務では、
- 対象物質の特定
- 裾切値の確認
- 合算濃度の判定
- 営業上の秘密の要否
- 幅表示が裾切値をまたいでいないか
- 10%刻みまたはそれより狭い幅になっているか
をチェックすることが有効です。
迷ったときは、裾切値近傍は正確なwt%で記載するのが安全です。
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