輸入元の英文SDSと作成代行で納品された日本語SDSで危険有害性や絵表示が違う
2026.01.13
輸入元の英文SDSと作成代行で納品された日本語SDSで危険有害性や絵表示が違う
輸入元の英文SDSを見ていたら、作成代行で納品された日本語SDSと危険有害性や絵表示(ピクトグラム)が違う——。
「どっちが正しいの?」「代行で間違えられた?」と心配になるご相談をよくいただきます。
結論から言うと、
「英文SDS」と「日本語SDS」が違っていても、お互いが“間違い”とは限りません。
多くの場合、前提としている国・地域の法規やGHS分類が違うために、結果も変わっているのです。
状況整理:なぜ「英文SDS」と「日本語SDS」が食い違って見えるのか?
典型的なケースはこんな感じです。
- 海外メーカーから英文SDSを入手
- 日本国内で販売するために、SDS作成代行に日本語SDSの作成を依頼
- 納品された日本語SDSを見比べると…
- 危険有害性の区分が違う
- 絵表示(ピクトグラム)の種類・数が違う
- 注意喚起語やH文・P文も微妙に違う
このとき、「代行で分類を間違えたのでは?」「海外メーカーのSDSと揃えるべきでは?」と不安になる方が多いのですが、実は“正しく日本向けに作り直した結果、違って見える”ことも多いのです。
理由①:そもそも「前提としている法令・規格」が違う
まず押さえておきたいのが、英文SDSと日本語SDSは、そもそも前提にしている法令が違うという点です。
英文SDSの多くは「輸出元の国・地域向け」
輸入時に入手する英文SDSは、
- EU向け(CLP規則ベース)
- 米国向け(OSHA HCSベース)
など、相手国の制度を前提に作成されていることがほとんどです。
つまり、英文SDSは「輸出元の国・地域で使うためのSDS」であって、日本向けに最適化されていないことが多いのです。
日本語SDSは「日本法規に準拠」させて作る必要がある
一方、日本国内で流通させるためのSDSは、
- 労働安全衛生法(安衛法)
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法)
- 毒物及び劇物取締法(毒劇法)
など、日本の法規制に準拠した内容になっている必要があります。
理由②:GHS分類の“採用範囲”や“閾値”が国によって違う
「GHSは世界共通だから、結果は同じはずでは?」という疑問もよくあります。
しかし、GHSは“世界共通の枠組み”であって、各国がその中からどの危険有害性区分を採用するか、どのしきい値で運用するかは国ごとに裁量があります。
その結果、
- EUでは採用している区分
- 日本では採用しない/任意扱いの区分
といった違いが生じ、同じ成分・同じ濃度でも、評価結果(区分)が変わることがあります。
例)
EU版の英文SDSでは「発がん性区分2」なのに、
日本語SDSでは分類なし(区分外)となる …など
このように、GHS分類の運用差が、危険有害性や絵表示の違いとして表面化します。
理由③:絵表示(ピクトグラム)には“優先順位ルール”がある
危険有害性が違えば、当然、絵表示(ピクトグラム)も変わります。
加えて、GHSには絵表示の「優先順位ルール」があるため、そこでも英文SDSと日本語SDSの見た目が変わりやすくなります。
GHSの絵表示は9種類+優先順位ルール
GHSでは、危険有害性に応じて使用する9種類の絵表示が定められています。
例:
- どくろ
- 炎
- 円の上の炎(酸化性)
- 腐食性
- 感嘆符
- 健康有害性マーク など
さらに、
- 「どくろ」は他の多くの絵表示よりも優先
- 「健康有害性」は「感嘆符」より優先
- 「腐食性」も「感嘆符」より優先
といった優先表示ルールがあります
結果として、絵表示の組み合わせが変わる
たとえば、
- 英文SDS ⇒ EUの分類に基づき、どくろ+腐食性+感嘆符 の3つが並んでいる
- 日本語SDS ⇒ 日本の分類に基づき、どくろ+腐食性 の2つだけになっている
といったケースがあります。
これは、
- 危険有害性の区分がそもそも違う
- 絵表示の優先順位ルールにより、一部が省略されている
といった理由からであり、「どちらかが間違っている」というより、前提条件とルールが違う結果と考えるのが自然です。
理由④:参照しているデータ・改訂時期の違い
もう1つ見落とされがちな要因が、データソースと改訂時期の違いです。
- 英文SDS:数年前に作成・改訂されたまま
- 日本語SDS:最新のGHS分類表や法改正を反映して作成代行
というケースでは、日本語SDSの方が新しい科学的知見・最新法規を反映していることも少なくありません。
その結果、
- 新たな毒性データにもとづき、英文SDSでは未分類だった危険性が日本語SDSでは付与されている
- 法改正により、日本だけ危険区分が強化されている
といった違いも生じます。
理由⑤:作成代行は「翻訳」ではなく「日本版SDSの再設計」
SDS作成代行サービスが行っているのは、
- 英文SDSを単に日本語に直すことではなく
- 日本法規・日本のGHS運用に基づいて「日本向けSDS」として再構成すること
です。
そのため、危険有害性が違う/絵表示が違うというのは、むしろ「日本向けに正しく作り直した結果」である可能性が高い、という点を知っておいていただくと安心です。
「どっちが正しいの?」と聞かれたときの考え方
Q. 英文SDSと日本語SDSで内容が違うのですが、どちらを信じればいいですか?
日本国内での安全管理・法令順守が目的なら…
日本国内での使用・販売・保管に関しては、基本的に「日本語SDS(日本法規準拠)」を優先すべきです。
理由:
- 日本語SDSは、日本の法令に対応するよう再設計されている
- 労働安全衛生法等の対象判定も、日本語SDSベースで行われる
一方、英文SDSは、
- 元メーカーが出荷国・地域向けに作成したもの
- サプライチェーン上の情報共有としては有用
という位置づけで、「日本での扱い方を決めるための最終根拠」としては使わない、と考えるのが安全です。
8. 実務でやってはいけないNG対応
違いがあることに気づいた際、次のような対応はおすすめできません。
- NG①:海外メーカーの英文SDSに合わせて、日本語SDSの分類を“弱く”書き換える
- NG②:「見た目を揃えたいから」といって、絵表示を英文SDSに合わせて削る
- NG③:日本法規対応よりも、“海外本社のSDS”を優先してしまう
これらは、日本国内での法令違反や、リスク見逃しにつながる可能性があります。
まとめ:違いは「ミス」ではなく「役割の違い」から生まれる
最後にポイントを整理すると
- 英文SDSと作成代行で納品された日本語SDSで、危険有害性や絵表示が違うのは珍しいことではない
- 多くの場合の理由は
- 前提にしている国・地域の法令・GHS規格が違う
- 採用している危険有害性区分やしきい値が違う
- 絵表示の優先順位ルールの運用差
- データソースや改訂時期の違い
- 「翻訳」ではなく「日本版SDSへの再設計」をしているため
- したがって、違いがある=どちらかが間違い、とは限らない
- 日本国内での安全管理・法令順守には、日本法規に準拠した日本語SDSを優先して使うのが原則
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SDSの作り方ーSDS作成代行を利用する時の基礎知識 この『SDS』本当に必要?!ー初めてSDS作成代行を利用する際の豆知識
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