【SDS】安衛法における「管理濃度」と「濃度基準値」の違いを正しく理解する
2026.02.27
【SDS】安衛法における「管理濃度」と「濃度基準値」の違いを正しく理解する
作業環境測定の指標である管理濃度と、労働者の呼吸域を評価する濃度基準値の違いを徹底解説。SDSの「ばく露防止及び保護措置」を正しく作成するためのポイントをまとめました。
はじめに
化学物質を安全に取り扱うためには、SDS(安全データシート)の整備と、労働安全衛生法(安衛法)に基づく作業環境管理の理解が欠かせません。
なかでも、安衛法で重要な概念である「管理濃度」と「濃度基準値」は、名前が似ているため混同されがちです。
この記事では、両者の違いと、SDSにおける記載・活用のポイントを整理します。
※「許容濃度」との違いについては別記事で解説しています。
管理濃度とは
管理濃度とは、有害物質に関する作業環境の状態を評価するための基準値です。
作業環境測定で得られたデータにもとづき、作業場の空気環境が適切に管理されているかどうかを判断する指標となります。
ポイントは次のとおりです。
- 対象:作業場の空気環境(場の濃度)
- 目的:作業環境管理の良否判定
- 根拠:作業環境測定結果にもとづく管理区分の判断
管理濃度は、第1〜第3管理区分を決定する際に用いられます。
- 第1管理区分:管理濃度を十分下回り、良好な状態
- 第2管理区分:注意が必要な状態
- 第3管理区分:改善措置が必要な状態
このように、管理濃度は職場全体の「環境」を評価するための指標であり、個々の労働者のばく露を直接評価するものではありません。
濃度基準値とは(管理濃度との違い)
安衛法には、管理濃度とは別に「濃度基準値」という指標も存在します。
両者は似ていますが、評価対象・目的・測定方法が異なります。
| 項目 | 管理濃度 | 濃度基準値 |
|---|---|---|
| 評価対象 | 作業場の空気中濃度(作業環境) | 労働者の呼吸域濃度(個人ばく露) |
| 目的 | 作業環境管理の良否判断 | 労働者の健康障害防止 |
| 測定方法 | 作業環境測定(場の空気) | 個人ばく露測定(個人サンプラーなど) |
| 法的位置づけ | 作業環境評価基準にもとづく管理指標 | 労働者ばく露管理のための基準値 |
濃度基準値は、労働者が実際に吸入する空気中の有害物質濃度が、健康障害を生じない範囲に収まるよう設定された値です。
一方、管理濃度は作業場の平均的な状態を評価するものであり、直接的に個人の健康リスクを示すものではありません。
したがって、
- 管理濃度:作業場の「環境」を測定し、区分を決める指標
- 濃度基準値:労働者の「ばく露」を測定し、健康を守る指標
という役割の違いがあります。
SDSにおける管理濃度と濃度基準値の記載ポイント
SDSは、化学物質の危険性や取扱い上の注意を伝えるための重要な文書であり、安衛法に基づく作業環境管理・ばく露管理とも密接に関係しています。
特に、「8. ばく露防止及び保護措置」には、管理濃度や濃度基準値などの情報を適切に記載しておくことが重要です。
1. 管理濃度の明記
- 該当物質に管理濃度が設定されている場合、数値と単位(例:○○ mg/m³)を明記
- 作業環境測定や管理区分の判断の参考となるよう、「作業環境管理上の基準値」であることが分かるように記載
2. 濃度基準値の併記
- 個人ばく露管理に関する基準がある場合、「濃度基準値(8時間値/短時間値)」を併記
- 労働者への配慮やばく露管理の必要性を示すコメントを付記すると実務で活用しやすい
このように、SDSに管理濃度と濃度基準値を明確に記載することで、現場における安全管理・法令対応の質を高めることができます。
まとめ
- 管理濃度:作業場の空気環境を評価するための基準値であり、第1〜第3管理区分の判断に用いられる。
- 濃度基準値:労働者の呼吸域におけるばく露を評価する基準値であり、個人ばく露管理・健康障害防止に直結する。
- SDSには、管理濃度・濃度基準値を適切に明記し、作業環境測定・個人ばく露管理に活用できる情報として整理することが重要。
両者の違いを正しく理解しておくことで、SDSの情報を現場の安全管理と法令遵守により効果的に活かすことができます。
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