日本法規
がん原性指針対象物質:「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針」について
2025.07.22
■がん原性指針とは
「がん原性指針」は、労働安全衛生法第28条第3項に基づき、がん原性のある化学物質に起因する労働者の健康障害を予防するため、
厚生労働大臣が定めた指針です。動物実験で発がん性が確認された化学物質のうち、人に対してがん原性の可能性が否定できないものを対象とし、
事業者に予防的措置を講じるよう求めています。
■対象物質
厚生労働大臣が指定する化学物質(以下「対象物質」)およびその含有量が重量の1%以上の製品が対象となります。
なお一例として、指針の対象となる物質には、以下のようなものがあります。
・アクリル酸メチル
・アクロレイン
・N,N-ジメチルアセトアミド
・スチレン
・トリクロロエチレン
対象物質の中には有機溶剤として使用されるものも含まれており、有機溶剤中毒予防規則(有機則)については、有機則の規定が優先されます。
■指針に基づく主要な措置内容
(1)対象物質へのばく露を低減させるための措置
- 作業環境管理:作業工程の改善、設備の密閉化、局所排気装置の設置
- 作業管理:指揮者の選任、適切な作業位置・方法、保護具の使用、ばく露時間の短縮
- 装置の管理:排気装置の適正稼働と保守点検、排気・排液による汚染防止
- 保護具の管理:労働者人数分の保護具を用意し、清潔・有効に維持
- 作業基準の策定:操作・点検手順、異常時の応急措置、保護具の使用基準
(2)作業環境測定
- 対象物質の空気中濃度を6ヶ月以内ごとに1回測定(特定物質は除外)
- 測定結果の評価に基づき、改善措置(工程改善、保護具着用等)を講じる
- 測定結果とその評価を30年間保存
(3)労働衛生教育(計4.5時間以上)
- 対象物質の性状、有害性
- 使用業務と健康障害、予防・応急措置
- 排気装置・保護具の保守管理、作業環境の把握
- 関係法令の解説
(4)労働者の把握
- 月1回以上の頻度で以下を記録
- 労働者の氏名、従事業務の概要・期間
- 著しい汚染が発生した際の概要と応急措置
- 記録は30年間保存
(5)危険有害性等の表示および文書交付
- 化学物質提供時に容器等への名称表示とSDS(安全データシート)の交付
- 労働者への周知も必要(SDSの掲示など)
参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07948.html