米国法規に基づく英文SDSを新規に作成することをお勧めします。
二つの理由があります。
- 1.国によって、SDS関連法規の内容が異なっているから。
- 2.国によって、危険有害性分類の根拠となる、GHS分類結果つき危険有害性化学物質のリストがことなるから。
補足説明
1.国によって、SDS関連法規の内容が異なっているから。
SDSの枠組みはGHSが規格化していますが、実行は各国の法令に基づいて行われます。各国はGHSを尊重して法規制を定めていますが、その内容は国によって異なります。
SDSに関わる法規制が異なる理由
- ・GHSが規格の細部に選択肢(一部の健康有害性に関する濃度裾切値、およびGHS分類区分の選択的対応(Building Block Approach)を設けていて、参加国により選択が異なるから。
- ・GHSは2年ごとに改定されるが、参加国が法規制を制定する際に根拠とした版数が異なるから。
- ・参加国が、自国の状況を踏まえてGHSに無い規定を追加しているから。
2.国によって、危険有害性分類の根拠となる、GHS分類結果つき危険有害性化学物質のリストがことなるから。
GHSでは危険有害性分類の根拠となるデータは、製品の供給者が選ぶことになっていますが、各供給者が膨大な文献データを調査することは多くの場合困難です。そこで、各国政府は代表的な危険有害性化学物質についてGHS分類結果つきの危険有害性の分類区分リストを作成して公表しています。
主なリストは次の通りです。
- EU:EU-CLPリスト(Annex VIのTable 3.1)
参考URL:https://eur-lex.europa.eu/ - 日本:政府によるGHS分類結果(NITEリスト)
参考URL:http://www.safe.nite.go.jp/ghs/ghs_index.html - 中国:危险化学品目录(2015版)信息表
参考URL:http://www.nrcc.com.cn
このほかにもリストの整備を進めている国がありますが、実用レベルに至っている国は少ないと考えられます。
日本では、日本のリストにより危険有害性を分類してSDSを作成することが標準的であり、供給者にとってリスクの少ない方法です。
米国では、EUのリスト(米国は独自リストを作成していません)により危険有害性を分類してSDSを作成することが標準的であり、供給者にとってリスクの少ない方法です。
以上で説明したように、日本語のSDSを英語に直訳しても、米国の適切なSDSになるとは限りません。輸出の相手先から、英語あるいは現地語のSDSの提供を求められた場合には、相手先の法規制を踏まえて、適切なSDSを提供することが重要です。