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安衛法における営業上の秘密に該当する成分の取扱い|SDS作成時の注意点

2025.06.05

安衛法における営業上の秘密に該当する成分の取扱い|SDS作成時の注意点

労働安全衛生法(安衛法)では、SDS(安全データシート)に記載すべき成分情報が営業上の秘密(Confidential Business Information, CBI)に該当する場合、その情報を秘匿することが一定の条件のもとで認められています。
しかし、秘密保持を理由にすべての情報を非公開にすることは認められておらず、危険有害性に関する情報や安全な取扱い方法など、労働者や取引先の安全に必要な情報は必ず提供しなければなりません。
この記事では、SDS作成時に営業上の秘密を扱う際のルール、法的制約、例外事項、そして安全確保との両立方法を詳しく解説します。


営業上の秘密に該当する成分情報の取扱い

営業上の秘密(CBI)に該当する成分とは、企業の配合技術や製造ノウハウ、商業上の優位性を保つために公表できない情報を指します。安衛法では、こうした情報を保護しつつも、安全性を担保するための最低限の情報提供が義務づけられています。したがって、SDS作成時には「どこまでを秘匿し、どこまでを開示するか」を明確に区分する必要があります。

SDSへの明記方法

営業上の秘密に該当する場合は、その旨をSDSの「3. 組成及び成分情報」欄に必ず記載します。これは、情報を意図的に非公開としていることを明確にし、受け手に透明性を確保するためです。

【記載例】
「本成分は営業上の秘密に該当するため、成分名および含有量を非公開としています。ただし、有害性評価は実施済みです。」

成分名および含有量の省略

営業上の秘密として扱う場合、成分名や具体的な含有量をSDSから省略することが認められます。
ただし、省略する場合でも、「非公開」「秘密」などの表現を必ず明示し、代替的に化学的性状や危険有害性情報を提供する必要があります。
また、取引先との契約に基づき、秘密保持契約(NDA)などで別途情報を開示するケースもあります。

記載を省略できない例外物質

以下の物質については、営業上の秘密に該当する場合でも、省略は認められません。法的に必ず成分名と含有量を記載する必要があります。

  • 労働安全衛生法施行令第17条に規定される製造許可物質
  • 有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則に定める物質
  • 厚生労働大臣がばく露濃度基準を定める物質

これらの物質は、労働安全衛生の確保のために、営業上の秘密よりも情報開示を優先するよう義務づけられています。

営業上の秘密に該当する成分の含有量表示方法

営業上の秘密に該当する成分の含有量は、濃度範囲表示で示すことが可能です。たとえば「10〜20%」といった形で表示し、その旨をSDSに明記します。
濃度範囲は原則10%刻みで設定し、10%未満の端数は切り捨てまたは切り上げます。より精度の高い範囲(例:5〜8%)を任意で示すことも可能です。

重量パーセント以外の表記

体積比やモル比など、wt%以外の単位で表記することも可能ですが、その場合はSDSに換算方法を明示しなければなりません。
ただし、法令上の適用判断に関わる場合(裾切値など)には、正確なwt%表示が推奨されます。

緊急時および行政機関への情報開示

  • 医療対応時:化学物質による急性中毒や事故発生時には、医療関係者に対して治療に必要な情報を即時に開示できる体制を整備しておく必要があります。
  • 行政開示:所管官庁から要請があった場合、営業上の秘密であっても開示義務があります。これは公共の安全や労働者保護を優先する安衛法の基本原則に基づくものです。

まとめ:SDS作成における「秘密保持」と「安全確保」の両立

営業上の秘密の保護と労働安全の確保は、相反するようでありながら両立が求められる課題です。企業は次の点を明確に実施することが重要です。

  • 営業上の秘密に該当する根拠と範囲を明確に定義する
  • 該当する場合はSDSにその旨を明記する
  • 例外物質は必ず名称と含有量を記載する
  • 緊急時・行政要請に即応できる情報管理体制を構築する
  • 秘匿情報であっても、危険有害性と取扱注意事項は必ず提供する

このように、SDS作成では「秘匿性」「透明性」「安全性」の3つを両立させることが求められます。情報を適切に管理し、正確な伝達を行うことで、法令遵守と企業信頼性の双方を確立できます。

近年の安衛法改正では、化学物質に関する表示義務とSDS提供義務が大きく見直されました。特に2023年の改正以降は、危険有害性分類に基づくラベル表示とSDS提供が段階的に義務化されています。
営業上の秘密に関しても、秘密保持の範囲や情報開示の在り方について、厚生労働省のガイドラインが随時更新されています。
最新の通知文書やFAQを確認し、自社のSDS作成・更新方針を見直すことが推奨されます。


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