中国向けSDSは「翻訳」だけではNG?日本法規ベースのSDSを中国法規準拠の中文SDSにする方法
2025.12.10
中国向けSDSは「翻訳」だけではNG?日本法規ベースのSDSを中国法規準拠の中文SDSにする方法
日本法規のSDS(安全データシート)をそのまま翻訳して中国に提出することがなぜ不適切なのか、また中国法規に適合した「中文SDS」を作成するために必要なステップなどを分かりやすく解説します。
中国向けSDSは「日本語SDSの翻訳」で済まない理由
日本法規ベースから中国法規準拠の中文SDSへ
中国向けに化学品や製品を輸出する際、「日本語SDSを中国語に翻訳すればいいよね?」
と思ってしまいがちですが、実はここに大きな落とし穴があります。
結論から言うと、日本法規を前提に作成された日本語SDSを、そのまま中国語に翻訳しただけでは「中国法規に準拠したSDS(中文SDS)」にはなりません。
1. 海外SDSは“翻訳”ではなく“各国法規への最適化が必要”
まず押さえておきたいのは、SDSは国ごとに前提となる法規制やGHS分類基準が異なるということです。
日本向けSDSの前提
日本国内で使用・販売する製品のSDSは、主に以下の日本法規を前提に作成されています。
- 労働安全衛生法(安衛法)
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法)
- 毒物及び劇物取締法(毒劇法) など
日本語SDSは、これら日本の制度に則って分類・記載した「日本市場向けのSDS」です。
中国向けSDS(中文SDS)の前提
一方、中国向けに必要なのは、
- 中国のGHS分類基準
- 中国の化学品関連法規
- 中国で求められる表示・ラベル要件
を踏まえた「中国市場向けのSDS(中文SDS)」です。
つまり、翻訳ではなく、「各国法規への最適化」だと考える必要があります。
2. なぜ日本語SDSの中国語訳だけでは不十分なのか?
よくあるパターンとして、
- 日本語SDS → そのまま中国語に翻訳
- 海外メーカーの英文SDS → 中国語に翻訳
という「翻訳中心」の海外SDS対応があります。
しかし、ここには次のような問題があります。
問題① 有害性分類の基準が国ごとに違う
GHSに基づき有害性を分類する際、
どの危険有害性クラスを採用するか・どの閾値で区分するかは、国や地域ごとに微妙に異なります。
そのため、同じ製品でも:
- 日本基準では「区分外」
- 中国基準では「区分○○」
と評価が変わることがあります。
👉 日本基準で分類されたSDSをそのまま翻訳しても、
中国基準での正しい危険有害性を反映できていない可能性があるという点が、「単純翻訳ではNG」となる最大の理由です。
問題② 参照している法令・規制が違う
SDSの中には、対象国の法令や規制への適合状況を記載する項目があります。
日本語SDSには日本の法令が、中国向けSDSには中国の法令が記載されるべきです。
- 日本語SDS:日本の各種法令・リスト
- 中文SDS:中国の法令・リストに置き換える必要がある
にもかかわらず、日本の法令がそのまま翻訳されているだけの中文SDSになってしまうケースも少なくありません。
問題③ ラベルとの整合が取れない
SDS の海外対応では、SDSと同時にラベル(表示)も重要です。
- ピクトグラム
- 注意喚起語
- 危険有害性情報(H文)
- 注意書き(P文)
などは、中国でのGHS運用ルールに合わせて決定し、SDSとラベルで内容が一致している必要があります。
日本語SDSを翻訳しただけでは、中国向けラベルに必要な情報や表現が不足・不整合になるリスクがあります。
3. 日本法規ベースのSDSと中国法規ベースのSDSの違い
同じ「SDS 海外」でも、日本と中国では前提がまったく異なります。
日本向け(国内向け)SDS
- 日本のGHS分類運用に基づく有害性判定
- 日本国内法(安衛法・化管法・毒劇法など)への適合状況を記載
- 日本語での記載が必須
海外メーカーから入手した英文SDSをそのまま使うのではなく、
日本法規を踏まえた“日本版SDS”として作り直す必要があります。
中国向け(中文SDS)SDS
- 中国のGHS分類基準に基づいた有害性判定
- 中国の化学品関連法規に基づく情報の反映
- 簡体字中国語での記載
- 中国向けラベルと内容の整合
✅ ポイント:
国・地域が変われば「前提になる法規と分類基準が変わる」=SDSも作り分けが必要
4. 中国向け「中文SDS」作成の基本ステップ
ここからは、日本語SDSをたたき台に、中国法規準拠の中文SDSを作成する流れをイメージしやすいように整理します。
Step1:日本語SDS・成分情報の棚卸し
まず、手元にある情報を整理します。
- 現行の日本語SDS
- 成分情報(化学名・CAS番号・含有量)
- 物理化学的性質(沸点、引火点、蒸気圧など)
- 毒性・環境影響データ(LD50、LC50、EC50 など)
これらは中国で再分類するための“データソース”として活用します。
Step2:中国GHS基準での再分類
次に、整理したデータをもとに、中国のGHS分類基準に従って有害性を再評価します。
- 物理化学的危険性
- 健康有害性
- 環境有害性
など、各ハザードクラスについて、中国基準に沿って区分を決定します。
ここが「SDS 海外」対応の肝であり、各国GHSの違いを理解した専門家の関与が求められる部分です。
Step3:中文SDSの構成・記載を中国仕様に整える
中国の規格に沿った項目構成(16項目)にもとづいて、SDS本文を簡体字中国語で作成します。
例)
- 1. 化学品及び供給者の情報
- 2. 危険有害性の要約
- 3. 成分・組成
- 4. 応急措置
- 5. 火災時の措置
- 6. その他の情報
…
このとき注意したいポイントは:
- 中国向けラベルと内容が矛盾していないか
- 中国国内で有効な緊急連絡先が記載されているか
- 一般名・化学名・製品名の中国語表記が適切か
Step4:ラベル情報との整合・最終チェック
最後に、SDSとラベルをセットで見直します。
- ピクトグラム
- 注意喚起語
- 危険有害性情報(H文)
- 注意書き(P文)
- 供給者情報・緊急連絡先
これらが中国の要求事項を満たしているか、SDSとラベルにズレがないかを確認します。
5. よくあるNGパターンとリスク
NGパターン1:英文SDS → 中国語翻訳のみ
海外メーカーが作成した英文SDSを、そのまま中国語に翻訳して提出してしまうケースです。
- 英文SDSが「米国向け」「EU向け」など別地域前提で作成されている
- 中国の分類基準や法規制と一致していない
といった理由から、中国で求められるSDSとは内容がズレている可能性が高くなります。
NGパターン2:日本語SDSの直訳中文SDS
- 分類が日本GHSのまま
- 日本の法令名がそのまま中国語に訳されている
- 緊急連絡先が日本の番号のみ
といった状態では、中国法規に準拠した中文SDSとは言えません。
NGパターン3:1種類のSDSで全世界対応しようとする
「英語1本で世界中に出せるSDSを作りたい」という相談もありますが、
実務的には国・地域ごとに法規や要求事項が異なるため、SDSを分けて作成する必要があるケースが多いです。
中国向けSDS(中文SDS)は、
「単なる翻訳版」ではなく「中国専用のSDS」として設計することが重要です。
6. 社内対応と外部専門サービスの賢い使い分け
中国向けSDSやその他のSDS海外対応を進める際、すべてを自社内で完結させるのは現実的に難しい場合もあります。
社内で対応しやすい業務
- 日本語SDS・試験データ・成分情報の整理
- 製品の用途・使用条件などの技術情報の提供
- 取引先へのSDS提供・改訂版の配布管理
外部専門サービスに任せたい業務
- 中国GHS基準にもとづく分類・見直し
- 中国法規との整合性チェック
- 中文SDSの文面作成・ネイティブチェック
- 他国向けSDS(英語・欧州向けなど)との一括整理
このように役割分担をすることで、
社内負荷を抑えつつ、各国法規に準拠したSDS 海外対応が進めやすくなります。
まとめ:中国向けSDSは“翻訳”から“設計”へ
- 中国向けSDSは、日本語SDSを翻訳しただけでは不十分
- 各国のGHS分類や法規制が異なるため、SDS 海外=各国仕様への最適化作業が必要
- 中国向けには、中国GHS分類・中国法規に基づく中文SDSとして作成・管理することが重要
- 社内での情報整理と、外部専門家による法規対応・中文作成を組み合わせると効率的
中国向けSDSやその他のSDS海外対応について、
「自社のSDSは中国法規に合っているのか不安」
「日本語SDSはあるが、中国向けにどうアレンジすべきかわからない」
といったお悩みがあれば、まずは現状のSDSを一度棚卸しし、専門家へ相談してみることをおすすめします。
🎯分かりやすくまとめた動画もありますので、ぜひご覧ください。
SDSの作り方ーSDS作成代行を利用する時の基礎知識
この『SDS』本当に必要?!ー初めてSDS作成代行を利用する際の豆知識
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